私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
外で昼食を済ませて戻ると、多美子が待ち構えていた。
「爽歌様がリビングでお待ちです」
一鈴は顔をひきしめた。
リビングでは、爽歌はソファに姿勢よく座っていた。今日も着物で、流した黒髪が美しい。帯飾りにしたダイヤが光る。
「多美子さんはこのままここにいてくださるんですよね」
彼女はじろっと一鈴を見た。
「ご要望でしたら」
「お願いします」
爽歌は立ち上がってにっこりと微笑んだ。
「お待ちしておりましたわ」
怯む自分を叱咤して、一鈴はピンと背を伸ばす。
「お待たせいたしました」
頭の中に佳乃を思い出す。彼女のように凛々しく毅然と、動揺など見せないように。
「おかけになって」
言われるままにソファに座る。
「なにかお飲みになる?」
「いりません」
「なんでも召し上がるのでしょう?」
爽歌の目が暗く光る。
うわあ、言い方が怖い。
一鈴の頬がひきつった。
「今日は少しお話をしたくて」
爽歌が言う。
「どのようなお話でしょう」
「長い付き合いになるかもしれませんから。仲良くしていただきたいの」
「ありがとうございます」
これって腹の探り合いだよなあ、と一鈴は緊張してへらへら笑う。
そんな芸当、できる気がしない。でも囮になるって言ったのは自分だし、なにがしかのプレッシャーを爽歌に与えないと。