私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 なにかないかな、と頭を巡らす。
「この前、ハンカチを穂希さんにいただいたんです」
「ハンカチは別れのときに渡すもの。穂希さん、あなたとは別れるおつもりでしたのね」
 爽歌はにっこりと笑う。
「あの人はそんな意味を知りませんよ」
 彼は開運グッズすら適当だった。

「いついただいたの?」
「爽歌さんのぞうりを直すときにハンカチを使ったから、埋め合わせで」
「埋め合わせでしかないと、わかってらっしゃるのね」
 ダメだこれ、負けっぱなしじゃん。
 きっとリイサもコスモも無理だ。佳乃ならできるに違いない。
 思って、一鈴はくすっと笑う。
 爽歌はむっとしたように目を細めた。口元に笑みを浮かべたまま。

「私は小さい頃から穂希さんと一緒でしたから、彼をよく理解しております」
「どんな子供だったんですか?」
「いつも人より抜きんでていらしたわ。みんなをまとめるリーダーシップ、正義感に溢れてかっこよかったの」
「すごいですね」
 さあ、と一鈴の頭の中で声がかかる。

 さあ始まりました腹芸大会、いや、マウント大会かもしれません! ご令嬢の爽歌選手は上流階級の出身、腹芸に慣れている模様。一鈴選手、圧倒的に不利! すでに負けは見えている! この難局をどうのりきるか!
 自分の実況が始まってしまった。慌てて頭を振って実況を追い出す。

「幼い頃から穂希さんはおモテになって。親しくしていた私はよく女性にからまれました。私が女子生徒に囲まれたときはいつも颯爽と現れて助けてくださったの」
「そんなタイミングよく現れたんですか」
 素直に感心してしまった。
「嫌みなことをおっしゃいますのね」
 爽歌は悲し気に顔を伏せた。
「だってすごいじゃないですか。私なんて」
 誰からも助けてもらえない、と言いかけ、違う、と思い直す。
「そもそも囲まれたことないです!」
 あはは、と一鈴は笑った。
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