私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 ナイフをふりあげて掛け布団をはぎとり、男は動きを止めた。
 ベッドにいたのはマネキンだった。
 直後、部屋の明かりが灯る。
 二人の屈強な女性が男にとびかかる。
 男はナイフを振り回す。
 が、彼女らは訓練されており、しかも二対一だ。男はすぐに取り押さえられた。

***

 その日、別邸の男子禁制は破られた。
 侵入者を捕まえたと報告を受け、穂希は警護の男性数人を連れて別邸に来た。
 夜半であり、メイドたちはいない。おかげで混乱はなかった。
 侵入者は五十がらみの男だった。小汚く、近付くと垢とアルコールがプンと臭った。
 男に見覚えはなかった。おそらく一鈴も知らないだろう。
 穂希は男を縛らせ、本邸の地下に閉じ込める。
 警察より先に話を聞きたかったからだ。

「なぜあの部屋の人間を狙った」
 男はふん、と鼻を鳴らす。
「金で雇われたんだ。悪いのは雇うやつだ」
 穂希は冷然と男を見る。
「誰に雇われた」
「知らねーよ。ネットで募集されたんだ」

「どこのサイトだ」
「覚えてねーよ」
 穂希は警護に指示して男からスマホを奪う。縛られた手の指を押し当て、ロックを解除する。
「やめろ!」
 男は叫ぶが、縛られているので抵抗できない。

 履歴から闇サイトにアクセスする。書き込みはすぐに見つかったが、詳しいやり取りはなかった。
 二十四時間で履歴が消えるメッセージアプリが入っており、それを使ったようだった。
 侵入経路など、聞きたいことは山ほどあった。

 が、尋問しても男は罵倒を口にするばかりだ。
「警察を呼べ。覆面でパトランプは回さないように指示を」
 時任に電話で指示をする。穏便に済ます気はなかった。
 監視を警備員に任せ、穂希は部屋を出た。
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