私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「た、助けて」
爽歌の声は風にまぎれて小さく聞こえた。
手を掴むと、爽歌はしっかりと握り返してきた。
一鈴は必死に爽歌を引っ張る。
爽歌の体はもう半分が外に出ている。その上、飛行船が揺れて、がんばっても力が逃げていく。少しずつずるずると、二人とも滑っていく。
なんで飛行中に開くの! 設計者を呪ってやる!
内心で文句を言いながら、懸命に引っ張る。
「一鈴さん!」
穂希の叫びが聞こえた。
彼はすぐさま一鈴と一緒に爽歌を引き上げ、ドアを閉めた。
「助かった」
二人で座り込み、はあはあと肩で息をする。
穂希の心配そうな顔が見えた。
へへ、と笑うと彼は泣きそうに微笑を返してくれた。
「穂希さん、怖かった!」
爽歌は穂希にすがりつく。
彼は驚いたあと、無表情にそれを引きはがす。
「自分がなにをしたのかわかっているのか!?」
「穂希さん?」
彼女は悲しそうに穂希を見る。
「私、一鈴さんに襲われて……」
一鈴は唖然とした。真逆のことをよく平気で言えたものだ。いや、それどころか本気で一鈴に怯えて震えている。
穂希は立ち上がり、冷たく爽歌を見下ろす。
「監視カメラですべて録画されている」
爽歌ははっと天井を見上げる。