私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 はらはらしていると、彼がナイフを奪い取り、遠くへ放り投げた。
「どうして? どうして守らせてくださらないの?」
 爽歌は切なく穂希を見つめる。
「もう、守らなくていいんだ」
 穂希は爽歌を抱きしめる。拘束するために。

「わかっていただけたの?」
 穂希は黙って首をふる。
 爽歌は不思議そうに彼の腕の中にいた。おとなしくなった爽歌に、穂希の腕がゆるむ。
「俺のせいか。俺が……」
「違います」
 一鈴は思わず口を出してしまった。

「絶対に穂希さんのせいじゃないです」
 爽歌がかっと目を見開いて一鈴を見た。
「あなた、まだいらしたの」
「穂希さんを解放してください」
 一鈴は爽歌を見据える。
「ずっと穂希さんを呪って縛り付けて、もういいでしょう。あなたは充分、穂希さんの人生を奪いました。これ以上は奪わないでください」
「奪おうとしたのはあなたでしょう!?」
 爽歌は穂希から離れて懐剣を抜いた。

 一鈴は歯噛みした。そうだ、彼女は常にそれを身に付けていた。
「私はあなたから穂希さんを守るわ。なんとしてでも」
「爽歌!」
 穂希が名を呼ぶと、爽歌は彼を見た。
「そうね、守るためには……そうよ」
 爽歌は刃先を穂希に向けた。

「私があなたを守ります」

 爽歌が言った。
 穂希は驚く。が、ふっと微笑んで両手を広げた。
 爽歌は懐剣を振り上げる。
「ダメ!」
 ふりかぶった懐剣の下に、一鈴は飛び込む。
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