私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
夜は暇だったから、実家から持って来た材料でなにか作ることにした。
アクセサリー作りが趣味だった。
「これもバカにされそう。でもどんだけバカにしても、あなたの片想いだからね」
莉衣沙を思うかべ、ふふふ、と一鈴は笑う。
彼のどこがいいんだろう。明らかに相手にされてない上、部屋は開運厄除けまみれだ。
持って来た材料を見る。バラや猫のチャーム、金と銀の金具。
そうだ。
あるデザインが閃く。が、そのためには材料が足りない。
迷ってから、買い物に行きたいがどうしたらいいかと穂希にメッセージを送った。スマホの番号は教えられていた。
翌日に行けるように手配しておく、と返ってきた。
翌朝、食事に呼ばれて食堂に行くと、多美子がいた。
「本当に私、働かなくていいんでしょうか」
念のために聞くと、冷たい目で見られた。
「明日から、あなたにはマナーを始めとして覚えて頂くことがたくさんあります」
ひい、と内心で悲鳴を上げる。穂希の言うやってもらうことってこれか、と気が付いた。
買い物に行った一鈴は疲れ果てて帰った。
高級外車で送られた先はデパートで、外商に服や靴を試着させられた。穂希の指示だから、とあれこれ決められた。届いたそれらは玉江と結衣子が片付けた。
気疲れした。ぜいたくな品も自分づきのメイドがいるのも落ち着かない。
買ってきたパーツでペンダントを完成させたときだった。
穂希が内密で訪問して来た。
「買い物は満足できたか?」
きかれた一鈴は完成したものを手に、穂希を見る。
迷ってから、ぐいっとそれを突き出す。
「お礼に差し上げます。鏡は魔除けになるっていうから作りました」
銀色の鎖の先に、二センチほどの鏡がぶら下がっていた。
五千万のお礼にしてはささやかすぎるのだけど。
「このパーツを買いに行きました」
「手作りを女性からもらうのは初めてだ! 器用だな」
穂希はうれしそうに目を細めた。
受け取って、ためつすがめつそれを見る。