私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「つけてくれないか?」
「じゃあ座ってください」
 言われた穂希はどかっと床に座った。
 一鈴は彼の背の側にまわって膝をつき、その首にペンダントをまわす。

 一瞬、自分から抱き着く形になってどきっとした。
 息がかかるほどの距離。
 彼のうなじが近くて、また心臓が跳ねる。
 さわやかな香りがしていた。
 弟とは違う髪、うなじ、背筋。肩幅は広くて、どきどきして視線をずらすとスーツの地模様がやけに目についた。

「できました」
「似合うか?」
 彼が振り向いた。
「似合ってないです」
「普通、嘘でも似合うって言わないか?」
「デザインが女性らしすぎました」
「そうか」
 穂希はトップの小さな鏡をつまんで眺める。

 一鈴はため息をついた。ペンダントをプレゼントなんて、普通は逆な気がする。
 前に恋をしたのは中学生のころ。恋人なんていたことがない。
 穂希のことを笑ったが人のこと言えない。

「大切にするよ」
「大切にしなくていいです」
 そっけなく言って、一鈴はうつむいた。
< 24 / 206 >

この作品をシェア

pagetop