私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
翌日の昼食後、穂希が運転手付きの車で一鈴を迎えに来た。
「休日もスーツなんですね」
「いつ呼び出されるかわからないからな」
ふうん、と一鈴は生返事をした。仕事の詳しい説明されてもめんどくさい。
「女性と二人きりで出かけたことないんだ。楽しみだ」
わくわくと彼が言う。
「三十一歳の言うことですかね」
「俺は呪われてるんだぞ!」
「自慢しないでください」
「自慢じゃない!」
一鈴は笑ってしまった。
いつもとキャラが違う気がする。こっちが素の穂希なのだろうか。
「笑うなよ」
「あなたが笑わせるから」
「穂希と、名前を呼んでくれ」
「穂希さん」
彼は笑顔になった。一鈴の胸がどきっと鳴った。
「いいな、名前で呼ばれるの」
「女性全員から名前で呼んでもらったら」
目を反らして窓の外を見る。いつの間にかビルに囲まれた道に出ていた。
「彼女らが呪われたらどうする」
「私は?」
「一鈴さんなら呪われない」
「なんですか、その無駄な確信」
下の名前で呼びあう約束になっていたが、実際に呼ばれるとどきどきした。
「赤くなった。かわいいところあるな」
「気のせいです」
「そういうことにしておこう」
穂希の声に余裕が生まれていて、なんだかしゃくに触った。