私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「小銭、持ってます?」
「バカにするな」
 穂希は二人分を料金箱にいれて、箱に大きな手をつっこみ、選ぶ。
 一鈴も箱から一つを選びとる。

「一緒に開けよう」
 穂希はわくわくしていた。
 が、二人とも大凶だった。
「嘘だろ」
 穂希は呆然と紙を見つめる。
「呪いだ。君まで呪いが」
「大凶は少ないのに二人ともって!」
 一鈴はけらけらと笑った。

「今が最低ならあとは上がるだけです。そもそも、吉凶より書いてある文章が大事です。神様からのメッセージですから」
「内容もひどい」
 一鈴は穂希から受け取り、おみくじを見た。
「願い、かなわず。待ち人、来ない。恋愛、女難の相あり」
 読みながら、一鈴は笑い出した。

「人事だと思って!」
「まったく同じ。作った人、手抜きしてますね!」
 自分のものを穂希のものと一緒に渡した。見比べた穂希は、驚いて一鈴を見る。
「気になるなら、あそこに結んで悪縁とさよならです」
 おみくじをおみくじ掛けに一緒に結ぶ。たくさんの結ばれたそれを見て、神様って大変だな、と一鈴は思った。

「すごいな君は。本当に呪いを解いてくれそうだ」
「穂希さんは自分で呪いをかけてますよ。思い込みの効果です」
「薬だと思って飲んだら薬じゃなくても効果が出るっていうあれか」
「良い効果が出るのはプラシーボ効果ですね。プラセボとも言いますが。マイナスの方だからノーシーボ、ノセボです」

 笑いながら一歩を踏みだしたとき、黒猫が前を横切った。
 穂希が固まった。
「不吉だ」
「外国の迷信です。黒猫って日本では幸運の猫ですよ。部屋の招き猫にも黒猫がいるじゃないですか」
「そういえば」
「イギリスでも黒猫は幸運の象徴らしいですよ」
 一鈴が笑って歩き出すと、さきほどまでいたところに鳥のふんが落ちて来た。
「このタイミングで!?」
 穂希が絶望したように言う。
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