私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
疲れた。
運転手に礼を言って、一鈴はよろよろと玄関に向かう。
彼は先回りして玄関を開けてくれた。
最初に来たときに案内された正面玄関。
人に開けてもらって入ることになるとは。
重ねて礼を言って入ると、コスモが通りがかった。
「疲れてるね」
「疲れました」
コスモは心配して一鈴をリビングに連れて行き、カフェオレとチョコレートをメイドに頼んだ。
長いソファに隣同士で座って、あらましをコスモに話す。
「へえ、デートを邪魔されたんだ」
「邪魔はむしろ私かと」
コスモは届けられたカフェオレを飲んだ。
「偶然すぎない? あの女、知ってて行ったんじゃないかな」
「どうやって知るんですか」
「あの男が自分で教えたかも。俺をとりあう女の図が見たかったとか」
「そんな人じゃないですよ」
一鈴がカフェオレを口に含んだときだった。
「ちょっと!」
背後からの急な声に、一鈴は驚いて噴きそうになった。
咳をしながら振り返ると、莉衣沙がいた。
「なんで穂希さんとデートしてるの!」
「ただのつきそいです」
「じゃあなんでダイヤのペンダントなんてしてるの! 昨日までなかったじゃない!」
めざとい、と一鈴は顔をひきつらせた。
「立ち聞きとは趣味がいいねえ」
コスモが細い目をさらに細めた。
「聞こえたの! あんたなんか呪われればいいのよ!」
叫んで、莉衣沙は怒りながら立ち去った。
「気にするなよ」
「大丈夫です。莉衣沙さんは元気ですね」
「……あんた、キャパすげえな」
えへへ、と一鈴が笑うと、コスモは目元を緩めた。