私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
翌日の昼食には恭子が同席した。
食後のコーヒーが出たところで、恭子は切り出した。
「莉衣沙さんは退院後、そのままご実家に帰られます」
一鈴は彼女から怨嗟をこめてにらまれ、動揺した。
「莉衣沙さんは誰かに突き飛ばされたとおっしゃっています。メイド服の若い女性で背は155センチ程度、黒髪、長さは鎖骨の下くらい、太ってもやせてもいない」
自分と特徴が似てる?
気づくと全員が一鈴を見ていた。背筋を冷や汗が流れる。
「あなた、メイド服はお返しになって?」
恭子がきく。
「とっくに返しました」
「多美子さん、どう?」
「返却されています。倉庫は鍵がかかっています。在庫は確認中でございます」
「内部の人間なら隙を見てとりにいくことは可能ね」
恭子は一鈴から目を離さず言った。
「つまり、お屋敷の誰にでもできるということです」
負けじと言い返した。
「あいつが落ちたとき一鈴さんは私とリビングにいました。直前にはご長男も来ましたよ」
コスモの言葉に、一鈴はこくこくと頷いた。
「メイドと共謀したのね」
「呪いじゃないですか」
コスモは鼻で笑った。
恭子は鋭い目を彼女に向けた。
「目撃者は? 防犯カメラってないんでしょうか」
「目撃者はいません。カメラは外だけです。本来、不審な者は入れませんから」
恭子は一鈴に冷たく言い放つ。
「とにかく。屋敷に不審者が紛れ込んでいるようです。みなさまお気を付けて」
恭子はそう言って話をしめくくった。
一鈴はおそるおそるコスモを見た。彼女は苦笑して肩をすくめてみせた。