私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~


 昼食後、一鈴はコスモとリビングに向かった。
 ソファに並んで座る。コスモは長い脚を組み、背もたれにもたれた。
「めんどくさいことになったな」
「本当に突き落とされたとしたら、殺人未遂?」
 一鈴はぞっとした。

「わがままでメイドに恨まれてそうだけど、殺すまでいくかな。ケガさせたかっただけかも」
「本人に聞いてみようよ」
 円滑に五千万をもらうためにも、呪いではないと証明したい。
「そうだな」
 そこへ玉江が入って来た。

「一鈴様、午後のお勉強の時間でございます」
「キャンセルで。奥様や多美子さんには、コスモがわがままで連れ出したって言っておいて。——行こうか、お嬢様」
 立ち上がったコスモは一鈴に手を差し出す。
 逆光を受けて微笑む彼女に、どきっとした。
 下手な男より凛々しい。
 一鈴は彼女の手をとった。



 コスモは莉衣沙の担当メイドから入院先を聞き出し、一鈴とともに病院へ向かった。
 途中で買った焼き菓子を手に、病室に行く。
 最上階の特別室だった。
 扉の前には二人の男が立っていた。黒いスーツにサングラスで、一鈴はびびった。
「ただの護衛だよ」
 コスモは平然としていた。
 ただの護衛って。お嬢様だとそういう感覚なのか。

 ドアをノックすると、どうぞ、と返事があった。
 がらっと開けてコスモが入り、一鈴が続いた。
「あなたたち、なにしに来たのよ!」
「見舞いだよ」
 コスモは焼き菓子の入った箱を投げた。
「きゃあ!」
 莉衣沙は悲鳴をあげて見事に受け取った。
「お嬢様!」
 護衛が中に飛び込んでくる。
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