私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
夜、珍しく穂希が正式に別邸にやってきた。
いつかのように夕食後に現れ、全員で出迎えてリビングに向かう。
ソファに腰掛けると、穂希が合図をした。
メイドがお盆に細長いジュエリーケースを載せて持って来て、一鈴以外の令嬢に配った。
「厄除けのダイヤだ。一鈴さんにはもう渡してある」
一鈴の隣に座っているコスモが彼女に見せるようにケースを開ける。と、一粒ダイヤのペンダントがあった。
「これ……」
一鈴はじっとそれを見つめる。自分がもらったのと同じデザインだった。
コスモは一鈴のペンダントと見比べ、顔を険しくした。
音をたてて蓋を閉め、つかつかと穂希につめより、ケースを突き返す。
「無神経すぎる!」
穂希はむっとしてそれを受け取らない。
「気遣いを受け取らないのも無神経ではないのか」
「一鈴さんの気持ちを考えろ!」
「彼女にはもう渡してある」
「そういうんじゃない!」
「おやめになって」
佳乃が二人の喧嘩を止めた。
「私もお断りいたします。受け取る理由がございません」
ケースを持って来たメイドを呼び、お盆に載せる。
「私はいただきます。穂希さんの優しさですもの」
着物姿の爽歌はケースを胸にうっとりしている。
とことんわかってない男だな、と一鈴は穂希を見る。
着物が多い爽歌さんにペンダントだなんて。
「配慮が伝わらなくて残念だ」
言い捨てて、彼は席を立った。
ケースを渡されたメイドはおろおろと周りを見る。
「私があずかります。折を見て穂希さんにお返ししますわ」
爽歌が言う。
「そうしてくれ」
コスモはケースを爽歌に渡すと、一鈴の手をとった。
「私の部屋で話をしよう」
そのまま連れられて、一鈴は席を立った。