私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
爽歌は宝来家の庭にある赤い太鼓橋に立っていた。
小川が池に流れ込む場所にあり、池では鯉が優雅に泳いでいた。
爽歌はぼんやりと水面を眺めていた。暗くなった庭を照らす外灯に水面がきらめく。
振袖の懐からジュエリーケースを取り出し、中のペンダントを眺める。
「同じものだなんて」
ため息をついてケースを閉じて懐にしまう。
「それでも、穂希さんからのプレゼントだわ」
そっと胸を押さえる。
幼い頃からずっと一緒だった。
無邪気に、ずっと穂希と一緒にいられるものだと思っていた。
子供時代の穂希はわんぱくだった。爽歌をいじめられていると、すぐにとんできて助けてくれた。
爽歌が呪いのせいでけがをすると、誰よりも心を痛めてくれた。
だが、そのせいで彼との間に距離ができてしまった。
爽歌は穂希に寄り添って来たつもりだが、彼は心を閉ざし、遠ざかろうとした。
その隙間に一鈴が現れた。
「本当に彼女と?」
つぶやきに答える者はいない。
「私があなたをお守りしたいと思ってますのに」
再びため息をついて歩き出した直後。
爽歌は何者かに突き落とされて池に落ちた。
「だ、誰、か!」
池は深く、足はつかなかった。
振袖はみるみる水を吸い、重く爽歌をからめとる。
じたばたするうちにも彼女の体は沈んでいった。