私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 彼女らはメイドに見向きもしない。
 一鈴たちはその場で待機となった。
 穂希は誰にも興味なさそうにタブレットを眺め指をスライドさせる。

 イケメンだ、と彼を眺めた。黒髪はナチュラルにさらりと流れていた。細面に切れ長の目がすっきりしている。組まれた足は長く、すらっとしている。

「私、かわいい靴を買いましたの」
 莉衣沙が彼の手を取って話しかける。大きな目は彼をうるうると見つめる。
「そうか」
 手をほどき、穂希は無感情に答える。
「穂希さん、今日はなにをなさったの?」
「仕事です」
「タブレットでなにをなさっているの?」
「仕事です」
 穂希はタブレットから目を離さない。

 佳乃はすました顔で無言で座っている。
 爽歌は伏し目がちな穏やかな笑顔で見守っていた。
 香珠萌はスマホを見ている。
 なんで私はここに残されてるんだろう。
 一日中掃除をしたから疲れていた。早く帰ってご飯を食べたかった。
 今日のメニューはなんだろう。お肉がいいな。
 考えたら余計にお腹が減って来た。

 ぐうううう!
 大きな音が響き、一鈴はお腹を押さえた。
「やだ、ありえない」
 莉衣沙がくすくすと笑う。
「申し訳ございません」
 多美子が頭を下げる。一鈴も慌てて頭を下げた。
「大丈夫か?」
 笑い含みに穂希がきいた。

「健康な証拠です!」
 とっさに一鈴は答えた。
「ここまでにしてさしあげたら? お疲れなのよ」
 困ったように微笑して爽歌が言った。
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