私はお守りじゃありません！ ～現代の大奥で婚約バトル！？ 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます～

「私、馬に蹴られる趣味はないんですよね」
　直後、一鈴は佳乃をつきとばす。小幡に向かって。彼は慌てて抱きとめる。佳乃の顔がかあっと赤くなった。
「なにをする！」
　小幡がどなる。佳乃をぎゅっと抱きしめて。
　一鈴は確信した。

「恋路は邪魔するより協力したほうが楽しそうって思うんですよ」
　佳乃は唖然として一鈴を見る。
「小幡さんって佳乃さんのこと好きですよね」
「なにを言うんだ！」
　小幡が慌てる。
　佳乃は唖然として彼を見た。
「耳、赤いですよ」
　小幡はばっと耳に手を当てる。

「好きでもない人からもらった腕時計なんて、毎日つけませんよねえ」
「でたらめを言うな！」
「佳乃さん、穂希さんが誰とも結婚する気がないのわかってて残ってましたよね。よくお出掛けしてたのは、運転手と一緒にいられるからですか？」
　今度は佳乃が赤くなって、小幡が呆然と佳乃を見た。

「佳乃さん、自分で稼いでてお金持ちですよね。なんとかなりそうに思うんですけどねえ」
「お黙りになって！」
「貴様、なにを言ってるんだ！」
　佳乃と小幡がそろって一鈴をにらむ。

「まあ、適当に聞き流してください。運転手とお嬢様がダメなら、社長とお嬢様なら結婚できるんじゃないんですか？」
「俺に起業しろと？」
「そばにいて苦しんでるくらいなら、挑戦してもいいんじゃないですか。お嬢様、投資家ですよね。彼には投資できませんか」
　意表をつかれて佳乃は小幡を見る。彼は困惑していた。

「俺が社長なんて……」
「ステータスがあればいいなら、なにかのコンクール優勝とか。技術を磨くためにはお嬢さまの資金が必要かもですけど」
「女性のお金で……男としてそんなことできるか！」
「つまり、あなたの愛はその程度ってことですかね。佳乃さん、あきらめましょう」
「小幡を侮辱しないで！」
「あなたにはプライドがないのか！」
　二人に言われて、へらっと一鈴は笑う。