私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 穂希は佳乃から面会の申し込みを受け、けげんに思った。
 無用な接触は避けたかった。佳乃が了承したので、夜に自室でリモート面会をした。
 画面の中の佳乃はいつも通りのすました表情だ。
 だが、不思議とどこか柔和に見えた。
「私、こちらを退去いたします」
「そうか」
「ご両親にもご挨拶をと思うのですが」
「父は出張、母は旅行だ。こちらで言っておこう」
「了解しました」
「……すまない」
 謝罪すると、佳乃は眉を上げた。

「邸内で不審な事故が起きた。それゆえの退去だろう?」
 ふふっと佳乃は笑った。
「違います。それより一鈴さんを逃がさないように尽力なさったら?」
 穂希が絶句すると、佳乃はまた笑った。

「驚いた姿、初めて見ましてよ」
「あなたが驚ろかしてくるのも、初めてですよ」
「一鈴さんの影響かしら」
「彼女がなにか?」
「内緒です。彼女がしゃべったら慰謝料を請求する予定ですの」
「怖いことをおっしゃる」
 くすっと穂希は笑った。
「私、一鈴さんのおかげで幸せです」
「ますます気になりますね」
「彼女によろしくお伝えください。お式に呼んでいただけるのをお待ちしてますわ」
 そう言って、佳乃は通話を切った。

「なにが起きたんだ」
 佳乃が幸せそうに笑っていた。あまつさえ、一鈴と仲がいいようなそぶりすら見せた。
 へらっと笑う一鈴を思い出し、穂希はため息をついた。
 お守りのような名前だ、と思った。
 それにすがりたくなるほど、穂希は思い詰めていた。
 一鈴が現れてから周囲は変化した。
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