家出少女の反抗
お母さんが今まで見たことのないような、必死な顔をして私を抱きとめ力強く背中を擦ってくれた十数年前の記憶。



潤がまだお母さんと付き合っていなかったあの時代。



あの頃を思い出す。



今思えば、その瞬間が最高潮だったのかもしれない。




それが今こんな形で、繰り返されるなんて思ってもみなかった。




時代っていうのは、残酷に移り変わるだなって知りたくないものだ。


「俺……昨日考えてやっと、お前のためにやれる事……これしかないけど、これーーー」



手に何かを、握らされる。



手を開くと電話番号が書かれた、メモが。




「ラインでも良かったんだけどーーけじめとしてちゃんと電話番号くらいは準備したほうがいいなって思ってさ。困ったら、電話で相談してくれ……」




最後に「お前は、よくやってる。知らないところで戦ってたんだな……。無理に聞き出そうとしてごめん」と頭を下げて、学校へ戻ってゆく。




ーーこの人もーー過去に傷を持っている人なんだろうか……?



そうじゃなければ、こんな電話番号を一人の生徒に渡すなんて手荒な真似はしないはず……。



それに無理に生徒指導室に連行しようとしなかったのは気遣い以上の何ものでもない。



優しくでも、ほっとかないーーーそんな怜音先生の後ろ姿を見ながら、「ごめんなさい」と私は呟いてた。




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