家出少女の反抗

どうする事も出来ないまま……船が通り過ぎて1時間が経った頃。



明かりが消えてしまい、不気味なカラスの声が木霊した。



「ーーもどろう」




一言目を発したのは、私だった。



その声は恐ろしく冷え冷えとして、何かを悟ってしまったかのように視界がクリアだった。



「どこに……?」




愛は嗚咽をひっくるめながら、私に問いただした。




「どこだろうな……私にもわからない……。でも私達の、仮の住まいに戻ろう。優の場所へ」


「優に言わないで……心配かけたくない」




私を覗き込むように、真っ直ぐな瞳に思わずドキリとする。




「言わないよ……」



思わず目を逸らした私に、愛がくっついた。




「霞が男の子だったら、恋人になれたかもしれないね……」



愛が笑いながら、涙ながらに覗き込む。




「何バカな事言ってるの?」





「なんでもない。帰ろう!!」





愛は私の手を引っ張った。



それは固く結ばれた強い絆のように、優しい温かさをほのかに放ちながら。




だがそのぬくもりが、思わぬ敵から略奪されそうになる事も知らずに。



< 42 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop