家出少女の反抗
どうする事も出来ないまま……船が通り過ぎて1時間が経った頃。
明かりが消えてしまい、不気味なカラスの声が木霊した。
「ーーもどろう」
一言目を発したのは、私だった。
その声は恐ろしく冷え冷えとして、何かを悟ってしまったかのように視界がクリアだった。
「どこに……?」
愛は嗚咽をひっくるめながら、私に問いただした。
「どこだろうな……私にもわからない……。でも私達の、仮の住まいに戻ろう。優の場所へ」
「優に言わないで……心配かけたくない」
私を覗き込むように、真っ直ぐな瞳に思わずドキリとする。
「言わないよ……」
思わず目を逸らした私に、愛がくっついた。
「霞が男の子だったら、恋人になれたかもしれないね……」
愛が笑いながら、涙ながらに覗き込む。
「何バカな事言ってるの?」
「なんでもない。帰ろう!!」
愛は私の手を引っ張った。
それは固く結ばれた強い絆のように、優しい温かさをほのかに放ちながら。
だがそのぬくもりが、思わぬ敵から略奪されそうになる事も知らずに。
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