ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
「果林……」

 勇人が私をギュッと抱き締める。体温が冷たいままなのはいつも通りだが、震えがうっすらと感じられる。

(不安、なのかな……)

 いつも表情が無く淡々としている彼の身体が震えているなんて予想外だ。

「多賀野くん……」

 私はなんて声をかけたら分からず、ただ彼の名前を口に出した。

「果林、一緒に、いよう……」

 当たり前だ。勇人とは何があっても一緒にいたい。

「勿論。私、多賀野くんがいないと嫌だもん。多賀野くんがいない生活なんて考えられない」

 ああ、これは……共依存てやつか? 違うかもしれないけど。でも、勇人がいないだなんて考えられないし、勇人がいなければ生きてはいけない気だってする。

「なんか、私の気持ち重いよね……ごめん」
「ううん、オレも……果林がいなきゃ、嫌だ」
「た、多賀野くん……」

 私は勇人の背中に両腕を回す。離れたくない。ずっと一緒にいたいという気持ちを込めながら。 
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