ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 改めて考えると私には勇人が欠かせなくなっていた。ゾンビ化して私に襲い掛かった母親にとどめを与えてからずっと一緒にいる。だから彼がいないのはあり得ないくらいになっていたのだ。
 だから……彼とは一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。

「ずっと一緒だから」
「うん」

 彼から身体をゆっくりと離し、リモコンを押してチャンネルをサブチャンネルに変えた。海の中をウミガメが前足を動かし飛ぶように泳いでいる。前足がまるで羽のように見える。
 
(小笠原の海、か……)

 先ほどの知床の景色とはちょっと趣が違う。具体的に言うと温かさというか、温暖な雰囲気が感じられる。海中には色とりどりのサンゴも生えていた。

(竜宮城みたいだ)

 エメラルドがかった青い海中をカラフルな小魚が泳いでいる。時折サンゴや海草の中に身を隠すとまた泳ぎだす。慎重さと華やかさが入り混じったような泳ぎ方だ。
 今、世界はゾンビパニックに至っている中だが、海の中はどうなっているのだろうか。あのゾンビイルカやゾンビサバがいた辺り海の中もカオスな状態になっているのだろう。
 もしもあのゾンビイルカやゾンビサバがいなければ海の中に潜りたいと思っていたかもしれないが。現実は非情なものだ。
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