ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 外に出る時以外は基本この部屋は施錠されている。窓も一切無いしシャワールームの換気扇から出入りするとか? そんな忍者みたいな事私には出来るはずがない。
 それにこの部屋の外に出る時は目隠しをされるのでどのような構造なのかもわからない。そのような状態で脱出しろと言われても不可能だ。断言できる。

(でもまだ続いている……)
「この研究所の構造を私達は把握している。皆様ご心配する事はありません」
(そう言われても不安しかない)

 ここで映像は途切れ、サブチャンネルに切り替わった。ハシビロコウが飼育員と一緒にいるシーンが映されている。

(なんだったんだ……)

 ……気のせいかもしれない。疲れているんだ。そりゃあこの医療研究所から勇人と共に出ていけるなら嬉しいが、脱走なんて出来るはずが無いし。

「寝よ……」

 昼食が来るまで寝る事にしたのだった。

「田中さん、お昼です」

 しばらくして白い防護服を着た女性が昼食の乗ったピンクのトレーを白い机に置いた。そして私に体温測定を促す。
 体温は36.6度。血圧も109の77に脈は78。平常だ。

「お昼食べ終わったら会議室に移動してください」

 勇人の所ではなく会議室。いきなりそう言われて反応する訳には行かなかった。
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