ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 私は廊下を歩くあの女性に勇人も一緒に脱出できるか聞こうとしたが、止めた。今聞くべき内容ではない気がして身体がフリーズしたからだ。
 結局部屋に戻った私は、ベッドの上で大の字になる。

「あーー……」

 このまま明日の放送が流れるのを待つしかないのか。
 それにしてもこの脱出計画。父親は知っているのか?

(あ、これ……もしかして)

 反乱というやつか。
 あの女性達は絶対に秘密厳守で、と言っていたが……。私は試しにナースコールを押して彼女を呼ぶ事にした。違うスタッフが来なければいいのだが……。
 7秒くらい経って部屋に入って来たのはさっき会議室で脱出の計画について話していたベテランの女性だった。

(良かった……)
「田中さん、何かありました?」
「あの……あの会議室での事なんですが。これってもしかして反乱と言うか、デモ的な事ですか?」
「……っ」

 言葉に詰まる。やっぱりそうだ。これは図星だ。

「そうです。詳しくはあまり言えないのですが……今の研究所のやり方に賛同できないスタッフは半分近く、いやそれ以上います。そしてあなたの父親は倫理的に問題のある実験にも手を出そうとしていて……だから多賀野くんに目を付けているんです」
「……っ!」
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