ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 ピピッ……
 体温計を取り出すと画面は37.1℃を示していた。

(セーフ……)

 私は女性に体温計を渡す。彼女は興味深そうに体温計を見つめた。

「37..1℃。微熱ですね。また熱が上がるかもしれないですし今日はここでゆっくりした方が良いかと」
「そうだな、そうしよう。果林、ゆっくり休むんだぞ」
「うん」

 父親はそう言い残し、部屋からゆっくりと静かに出て行った。
 部屋の中は女性と私だけになる。

「……命拾いしましたね。良かった」

 女性の小声が私の耳にしっかり届く。

「もう、バレてるかもしれません」
「……田中さん。そうですか……ならこちらも手を打たせて頂きます。放送が鳴るまではここにいてください」
「分かりました」

 女性も部屋から立ち去り、部屋には私だけになる。

(いよいよ不穏になってきた……)

 不穏さが目に見えて現れてきている。私は布団の中に潜るが目はぱっちりと冴えたままだ。

(寝られそうにないな……)
< 143 / 161 >

この作品をシェア

pagetop