ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

　そして次の日。朝食を食べ終えた後いきなりピンポンパンポンという放送が流れ出した。

「火災発生火災発生。皆さんは建物の外に逃げるように。火災発生火災発生ーー」
（これか。火災ももしかしてほんと？）

　私はベッドの上から降りて部屋の扉へ向かおうとした時、ガチャっという鍵が開錠される音と共にばっと勢いよく扉が開かれる。

「田中さん！」

　あのベテランの女性だ。いつも通り白い防護服を着ている。彼女は私に手を伸ばし早く部屋の外に出るように促している。

「火災は本当です。仲間が火とガソリンをぶちまけてくれました」

　と小声でそっと耳打ちしてくれた。わざわざ火災を起こしてまで……。

「そうですか」
「今から多賀野くんがいる所へ向かいます。はぐれないでくださいね」
「はいっ……！」

　そうはぐれないでと言う彼女の足は思ったより早い。白い防護服を着ているのに寝間着姿の私が彼女を追いかけるのがやっとなくらい早い。
　階段を降りて廊下を走る。懸命に走って走って……。彼の元へとたどり着いた。彼がいる部屋には既に女性と同じ防護服を着た男性2人がいた。彼はベッドの上であぐらをかいている。

「多賀野くん！」
「果林……！」
「多賀野くん、私と一緒に行こう！　早く！」