ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

番外編 ゾンビ研究について

 これはゾンビウィルスの研究についてまとめたものである。
 ゾンビウィルスは一度感染すれば致死率は100%。有効な治療法は存在しない。感染すれば心停止は避けられないのがまさに厄介な部分だ。だから治療法を模索するのは諦めた。
 代わりに私達が目指したのがゾンビウィルスの抗体及び感染予防ワクチンの開発である。ワクチンをうってゾンビウィルス感染を予防すればゾンビパニックもおさまるだろう。

(これしかない)

 ここでゾンビウィルスの発生について振り返りたいと思う。
 元をたどれば不老不死と若返りの研究過程で発生したもので、要は失敗作である。私達が求めているのは人間のまま不老不死もしくは若返りであり、心停止及び思考も運動機能も低下し凶暴化した状態になる事を目指している訳ではない。あれは完全なる失敗だ。
 補足説明をするとこの不老不死と若返りの研究自体はもう何百年も前から存在しているらしく、この過程でゾンビが発生するのは過去にもそれらしき例があったと古い文献には記されている。
 人間という生き物は失敗を重ねて成長し、成功する。だから失敗する事を恐れてはいけないし、この失敗作達も貴重なデータとして保管しておく必要がある。
 この研究所が設立されたのは戦後の事。研究所が設立されて初めてのゾンビ化が確認されたのは今から■年前。感染者は私の同僚の男性だった。ウィルスが入った液を浴びた彼は実験室で倒れ心臓停止、医師らによって死亡が確認された直後の出来事だった。
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