ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

最終話 これからも、ずっと一緒

「急いで！」

　女性が勇人に声をかける。勇人は事の重大さを理解したのかすぐさまベッドを降り、私の元へと近づいた。

「多賀野くん、一緒に行こう。私と一緒に……！」
「ああ、果林」

　勇人の冷たい手を私はぎゅっと握り、女性に誘導されながら走る。
　いつの間にか勇人の走りは私よりも早くなっていた。だが今はじっくり彼の動きを見ている場合ではない。

「あっち！」

　女性が誘導する向こう側には光が見える。建物の外だ。私達と同じように建物の外へ向かう人間は他にもいた。一瞬だけらんの姿も視界に映る。
　だが、そのまえに黒い影が立ちはだかった。

「……お父さん」
「果林。昨日のはもしかして仮病か？」
「微熱だったし、仮病じゃないよ」
（微熱だったから半分嘘で半分ほんとになっちゃったんだけど）

　父親が目の前に特殊部隊らしき白い防護服を着て銃を向ける人達を引き連れて目の前に立ちはだかっている。

「果林。こっちとしては自分の娘を撃ちたくはない。今すぐこっちに来るんだ」
「わかった。……行こう」

　私は勇人の手を引いて父親の近くに歩み寄った。
　当たり前だ。1人で行くわけがない。行くなら勇人と2人一緒だ。