ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
「実験の結果、0.009%の確率でゾンビウィルスの抗体を獲得する例がある事が判明した」
(抗体できるの?)
「感染経路はゾンビに捕食されるまたは体液を浴びる事。少ない量でも発症した事例アリ」
(ま、まさか……)

 私は右後ろにいる勇人に振り向き顔を見る。依然として無表情の彼だ。
 そんな彼に血を与え、キスをした。体液は十分……浴びているし飲み込んでいる。でも私はゾンビじゃない。腕や足を見てみたが肌の色は変わりはない。

(まさか、抗体が出来てる……?)

 その後も私はマニュアルを読み進めていった。ゾンビは不老不死という訳ではなく、攻撃すれば死ぬ。だから人間同様鈍器や凶器に銃なんかも有効だ。
 指定避難所の一覧もあった。今は勇人がいる以上……行く事は無いだろう。水道やガス、電気も止まる事の無いようになっているという文言もあった。やはり最初から皆いつかはこのような事態が起こる可能性があると知っていたのか。スーパーなど食料に関しては特に記載はなかった。どうにかしろという事だろう。
 マニュアルを読み終えた私はそれを持って、父親の自室を後にした。

「果林」
「多賀野くん? どうしたの?」
「血がホシイ。体液……でもいい」

 階段を下りる途中、彼からそうねだられる。
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