ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 後ろから腕を回されハグされている。相変わらず彼の体温は温かくなくむしろ冷たさを感じる。

「で、でも」
(包丁取りに行かなきゃ……ああ、痛いのはなあ……)
「動クナ。このまま」

 勇人はそう言うやいなや、私の右首元に勢いよくがぶりと噛みついた。

「!」

 彼が噛み付いたのは分かったが、痛みは全くない。なんだか麻酔が効いているような感覚がある。
 それにじゅるじゅると何か吸うような音。血が出ていてそれを彼が吸っているのだろうか。

「血、出てる?」
「うん」
「そ、そっか……」

 しばらくして勇人は私の右首元から顔を離した。その部分を手で触ってみるが、血は既に止まっているようだ。

(全然痛くなかった……)
「コノ方が血たくさんスエル……」
「そ、そうなんだ」

 
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