ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 シャワーからお湯を出し、椅子に座った彼の背中に流す。彼の後ろ姿には傷跡は特に見られない。それにしても肌は人間のそれじゃないのが良くわかる。

(感染したらこうなるんだなあ……)

 勇人は特に抵抗する様子もなく。ただされるがままの状態だ。今更ながら生前の彼はあの噂を聞く限りではこんな従順意志薄弱なキャラじゃなかったはずだが。

「髪も洗うよ」
「……うん」

 金髪に手をやりシャワーで水をかけてシャンプーもしていく。その後はボディーソープで身体もある程度洗って泡を流したらお風呂はこれで終わりだ。床も汚れていないので掃除する必要はそこまでなさそうだ。

「バスタオルで身体ふく?」

 そう尋ねると彼はゆっくりとうなづくのでバスタオルを手渡した。着替えはとりあえずは彼が履いている下着と父親の服を着てもらう事にした。

(その辺もどうしたらいいのか。調達するにしても外に出るのは怖いし)

 彼は守るとは言ったが、それでも外に出るのは怖いものだ。おまけにマニュアルには凶器や鈍器が有効と書いてあったが家の中にはそんなものはあんまりないし。かといって料理用である包丁を使うのも気が引ける。
 勇人が着替え終えた所で私達はドライヤーを持ってリビングに戻ったのだった。
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