ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 勇人の髪をドライヤーで乾かし、リビングのカウンターの上にあったブラシでとく。彼の髪はそれにしてもかっこよく不良というイメージ通りだ。
 
(そろそろ寝るか)

 その時。がちゃがちゃとまた玄関の扉から音がした。まさかゾンビか? 父親ならスマホで連絡するはずだが……

(電話が繋がりにくいなら、かけてこないかもしれない)

 少し経過すると音は全く聞こえなくなった。これはもう安心してもよさそうか。
 ただ寝ている間にゾンビが来られたら困るので、勇人と共に家の中を一通り見て回る事に決めた。

(な、なにか……)

 仕方ないので皿置き場に置いてある包丁を持って、鉄パイプを勇人に持たせたのだった。

「ちょっといいかな。戸締り確認したくて」
「……うん」

 まずは1階。窓や玄関の扉はしっかりと施錠しているのを確認する。そして中の様子が見えないようにカーテンをぴったりと閉める。
 これなら家の中に人がいるかどうか、目視だけではゾンビには分からないはずだ。
 
「よし、2階行こう」

 2階も同様に戸締りを確認し、カーテンを閉じる。窓から見えた景色は真っ暗で何も見えない。この状態で襲われたら……と思うとぞっとする。
 戸締りの確認を終えた所で私はお皿置き場に包丁を戻した。
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