ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
(ジャムとかあったっけなあ)

 冷蔵庫を開けるとイチゴジャムが瓶の半分ほど残っていたのでそれを使う事にした。トーストで食パンにうっすら焦げ目がつくくらいに焼けたらその上からジャムをペタペタとティースプーンで塗って頂く。お皿を出すのは面倒なので流しで立って食べる。

「むっ、美味しい」
「食パン?」
(多賀野くんが反応した)
「そうだよ。少し食べる?」
「いらない」

 勇人はいらない。と言ったが食パンに目線は向けたままだ。なんだか申し訳なさが湧いて出て来るが気にしてもしょうがないのでそのまま完食したのだった。
 朝食を頂いた後は手と顔を洗面台で洗い、歯磨きをする。風邪薬がまだ残っているのでそれも飲む。

(水道は使えている)

 蛇口から流れる水はいつも通り透明なままだ。特に濁ったり異臭がするというのも無い。ゾンビパニックになっているのにライフラインは全く問題が無い。そこに違和感は正直感じざるを得ない。もしかしたら父親が用意していたマニュアルのようなものが、電気水道ガステレビ局などに配置されているのだろうか。

(もしそうなら、お父さんの研究所での出来事も知ってる可能性がある……)

 私は勇人にリビングで待っているように伝え、自室で汚れても良いような私服に着替えた。
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