ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
(よし、食料を確保しないと)

 ライフラインは整っているので後は食料をどう確保するかだ。とりあえずお金は持っていかなければ。
 自分のバッグの中にある財布のお金を確認する。残金は……5000円くらい。母親はここに帰って来た時は手ぶらで彼女の私物はそういや見当たらなかったのを今更ながら思い出す。

(いつも行ってたスーパーに置いてあったりするかな。回収がてらそっちに行くか)
「多賀野くん。お出かけしない?」
「……外は危ない」
「……うん。でも食料が無いから調達しないと」
「そうか。それなら……俺が果林を守る」

 勇人は左手に持っていた鉄パイプをぎゅっと握りしめた。彼が守ってくれるなら心強い。
 だが、その肌だと私がゾンビと一緒にいるのがバレてしまう。私は両親の寝室から父親の私服であるグレー色のパーカーを引っ張り出し、勇人に着てもらうように促した。

「フードも被ってもらっていい?」
「うん」
「あと……マスクもしていこうか。私もしていくから」

 後は白い不織布製のマスクを付けたら準備は完了。玄関をゆっくりを開くと周囲には人はいないしゾンビのゾの字も無い。

「……今のうちに!」

 しっかりと玄関の扉に鍵を閉め、勇人と共にスーパーへと歩き出した。

 

 
< 35 / 161 >

この作品をシェア

pagetop