ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

第4話 海水浴場にて

 何とかはらはらした感情を我慢しながらトーストを完食する。すると勇人が何かを思いついたようにあ。と口を開いた。

「水族館……」
(もしかして、あの?)

 サブチャンネルをかけると水族館の映像が映し出される。
 淡水魚の水槽だろうか、流木や水草がレイアウトされた水槽の中を宝石のようなキラキラした小型の魚がひらひらと泳いでいる。

「……海いきたい」
「え?」
(海いきたいって言ったよね、今)

 勇人の言葉に驚く私。ここから海はそこまで遠くはないが近くも無い。どうやって移動するのか。

(自転車はあるけど……でも)

 彼を乗せて自転車を漕ぎ続ける体力は正直持ち合わせてはいない。しかも彼はゾンビ。自転車にそもそも乗れるのだろうか。

(どうしよう)
「海私も行きたいけど、ここから結構距離あるよ?」
「そうか……」
(タクシーなんかも呼べるか分からないし、お金もかかるしなあ……)
「自転車は?」
「え?」
(自転車乗れるの?)
「の、乗れるの? 危ないよ?」
「……」
 
 勇人は無言のままだ。しばらくして勇人は椅子から立ち上がって玄関に歩いていく。

「多賀野くん?!」
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