ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
「大丈夫。オレが果林を……守る」
「多賀野くん……ありがとう」
(彼がいるなら大丈夫か)

 私は自室に戻ると久しぶりに制服に身を通した。紺色のジャケット型のセーラー服は私も気に入っているデザインである。勇人も最初家に来た時に着ていた制服を着る。血は手洗いで何度も洗濯したので綺麗に落ちている……と思う。
 冷蔵庫の冷凍ルームに保存していたご飯を取り出し、お皿に移して電子レンジで解凍する。

「良い感じかな?」

 解凍出来たらご飯の上に卵のふりかけをかけて混ぜる。ラップをカウンターの上に敷いてその上にご飯を乗せておにぎりを作る。これを3つ程用意してランチバッグに入れた。

「おまたせ、行こうか」
「ああ……」

 勇人には不織布製の白いマスクと制服の上から父親の私服であるフード付きのパーカーを着用させるのも忘れない。勿論マスクは私も着用する。
 荷物を持って玄関に向かい、おそるおそるドアを開けた。

「!」

 目の前にお婆さんのゾンビがいた。私達を見るやいなや両手を振りかざし飛びつくようにして襲いかかるが、すぐに鉄パイプを持っていた勇人に撃退されたのだった。

「は、はあ……びっくりした……」

 いきなりの出来事に私はその場で腰を抜かしてしまい座り込んでしまった。
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