ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 或いはその逆だろうか。いずれにせよ、トイレは危険だという直感に似た何かが頭の中に浮かんできた。

(あの水音は血が落ちる音だったのか)

 少し歩くと左前方に階段が見えてきた。ここを上がって3階に私のクラスの教室があるはずだ。どうなっているのだろうか。

 「ここが……」

 階段を登り3階に到着した。3階には誰もいる気配はない。

(教室、あった)

 私のクラスの教室。施錠はされておらずドアは開きっぱなしだった。
 床や机のあちこちに血がついている。机や椅子も一部倒れていたりと何かあったかのような様子が見受けられる。
 私は自分の机に近づき、机の中にあった教科書を回収し教室から出た。長居は不要だ。

「多賀野くんは教室行く?」
「いや、いい」
「そっか。じゃあ、帰ろうか」

 階段を降りて1階に到着した時だった。

「?!」
「な、なんだ?!」

 私の目の前に学ラン姿のメガネをかけた男子生徒が廊下を横切るようにして現れる。彼の手にはナタが握られていた。

(えっ、うちの生徒?)
「……田中さん?」
「そ、そうだけど……」
「たったたた田中さん、な、何しに来たの? そ、それに後ろ……誰?」
(多賀野くん知らないんだな)
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