ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 彼の名前は吉住春海(よしずみはるみ)。隣のクラスの男子生徒だ。だから私の名前を知っていたのか。
 
「吉住くん、なんでここに?」
「ぐっ」

 何やら聞いてはいけない事を聞いてしまったのだろうか。
 彼は何やら言いたくはなさそうだ。

「あっ……その」
「吉住!」

 すると後方からもう1人ナタを持った男子生徒が現れた。
 彼は私と同じクラスの人間、鈴木廉だ。筋骨隆々で背が高く角刈りな彼は学級委員長をしていて皆からも慕われている人間だ。

「田中さん……それともしかして、多賀野か?」
「うん、そう……」
「田中さんどうやって暴走族総長と知り合ったんだよ……」

 私が勇人と一緒にいる事にドン引きする廉。廉は春海と一緒にいるのだろうか?

「2人とも一緒にいるの?」
「そう……なるな」

 観念したかのように廉はそう吐き出した。

「どこにいるの?」
「この地下だ」

 そう言えば学校には地下にも教室や運動部が使うシャワールームに大浴場、トレーニングルームなどがある。そこだろうか。

「連れて行こうか?」

 廉がそう問いかけた。私は勇人と顔を見合わせる。

「多賀野くん、どうする? 私はどちらでもいいよ」
「……じゃあ、行く。果林、に……手を出すなよ」

 勇人の威嚇に廉は分かった。と声をかけた。
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