ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
「当たり前だ。田中に危害は加えない」
「……鈴木くん、多賀野くんにも危害加えないよね?」
「勿論。約束する」
(何もなければいいけど。それに鈴木くんはだまし討ちするような人じゃないし……)

 私と勇人は春海と廉に先導される形で地下に通じる階段のある校舎に移動し、階段を降りる。相変わらず春海はおびえたような顔つきをしているが、廉はすでに腹をくくっているのかいつもと変わらないような引き締まった顔つきをしている。
 日の光が殆ど差してこない薄暗い階段を降りる途中、私は廉に質問をしてみた。

「ここ、結構ゾンビいるの?」
「ああ、だからナタで撃退してる。田中さんはどこにいるの? あの時休みだったよな?」
「家にいるかな。移動するのはリスクがあるし、なるべく家でいたいかなって」
「そっか。ああ、田中さんの親父さんて桜風医療研究所の人だよな?」
「うん、そう。テレビ見た?」
「見た見た。じゃあ、会えてないよな?」
「うん。お母さんもゾンビになったし」
「そっか……田中さんも大変だったんだな」
「まあ……」
(でも、多賀野くんがいたからそこまで大変でもないけど)
「ついたぞ」

 地下のフロアに到着する。すると廊下に何人か制服姿の男女がナタや段ボール箱を持って移動している姿が見えた。
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