ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 そのうちの1人がこちらへと興味ありげに近寄って来る。制服姿の女子だ。しかし上半身は女子用の制服なのに対して下半身は男子用のズボンを履いている。

「廉くん、春海くん、その2人は?」
「あ、田中果林です。この人は多賀野勇人」
「へえ、多賀野ってあの鬼龍会だっけ、その暴走族の?」
「まあ……そうなりますね。あなたは?」
「私は室井らん。田中さんとは多分同い年かな? よろしくね」

 室井らんはどうやら春海と同じクラスの女子との事だった。やや赤みのある黒髪ショートヘアで前髪はワンレン。はっきりとしたいわゆるアーモンドアイな目に左口元にはほくろがある。そしてどことなく中性的な雰囲気を漂わせている。

「こちらこそよろしくお願いします。室井さん」
「いえいえ。じゃあ、部屋の中案内しようか。皆ついてきて」
「あっはい」

 私と勇人はらんから一通りこの地下にある設備について紹介を受けた。シャワールームや大浴場はそのまま使用しているらしく、空き教室を寝室や厨房にして使っているとの事だった。

「厨房は絶対ドアを開けるのが決まり。煙とかガスとか溜まっちゃうから」
「そっか……」

 説明が全て終わった所でらんは私達にじっと真剣そうな目線を向けた。
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