冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる
あやなの顔に浮かんだのは困惑の色。
前焼肉に来たときもこんな感じで断れなかったんでしょうね。
さっき大人気ないことをした手前、ここは私がフォローしよう。
「裕次郎さん、やめてください。あやなが困っているでしょう?香菜子も心配しているようですし、そろそろ戻られては?」
「あ、はい。裕次郎さんごめんなさい。冴妃さんも言う通り戻ります・・・!」
あやなはぺこりとお辞儀して脱兎のごとく香菜子の元へ戻っていった。
それを見届けると裕次郎さんと浬に両サイドを埋められた。
「うーわ、冴妃やるね〜」
「何のことです?あとしれっと肩組まないでください、浬」
「痛っ、叩かなくてもいいじゃん。・・・今さっきの、牽制だろ」
「こんな目立つ場であんなに派手に謝罪されては私があやなをいじめてるって誤解されるじゃないですか。そうならないように立ち回っただけです」
「あ、いやそっちじゃなくて最後の方。裕次郎の誘い、断るように仕向けたろ」
「別にあれはあやなが困惑してたから帰しただけですよ」
それの何がいけないのかと疑問を持ちながら答えると、2人はやれやれと肩を竦めた。