冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる
見ると周囲はほとんど鎮圧されており、幹部たちが倒されたことによって残った【堕天】の構成員たちは戦意を喪失していた。
一通り戦況を見渡した後再び豹牙さんを見やると、豹牙さんは視線を下に向けていた。そして不満げに言う。
「嘘つくな。脚怪我してるだろ」
「えっ?あ、本当ですね。気づきませんでした」
豹牙さんに倣い視線を落とすと右脚を擦りむいて血が出ていた。
さっきあやなを庇ったときに出来たのだろう。咄嗟のことで受身をとれなかったから。
まぁこれぐらいなら適切な処置を施せばすぐに治るので問題はない。
「それよりも問題は──」
そこで言葉を切り、私の後ろに立ち尽くしていたあやなの方に視線を向けた。
「あやな、何でここに来たんですか?私は寮に帰れと言いましたよね?」
責めるように言うとあやなはビクッと肩を跳ねさせた。
「そっ、そうですけど、皆さんのことが心配で、いてもたってもいられなくなって・・・」
あやなはしどろもどろになりながらも言葉を紡いだ。その瞳はまた潤んでいる。