冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる

なんで賢人さんは冴妃さんのことが好きなのに、その気持ちを押し殺しているんだろうって。

もしかして、豹牙さんを恐れているから･･･？


「豹牙さんと冴妃は二人一緒にいるときが一番幸せだから」


賢人さんの答えを聞いてわたしは恥ずかしくなった。わたしはなんて浅はかなんだろうと改めて思ったから。

賢人さんはごく自然に言葉を紡ぐ。


「俺は自分の気持ちをどうこうしたいとは思わねー。二人が幸せならそれでいい」


その瞳にはスッキリしていて、わたしはますます混乱した。


「そ、それって本当に好きなんですか･･･！？」

「お前もしかして自分の価値観が正しいとか思ってるタイプ？」

「っえ？」


思わぬ切り返しに言葉が詰まった。


「俺が誰をどんな風に好きだろうと他人のお前に口出しする権利ねーわ」


他人、と線引きされて傷ついたけれど、その通り過ぎて何も言い返せなかった。