冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる
ぼんやりと天井を眺めながら遅れてそう理解した。
これは私が中学二年生のときの記憶だ。
【堕天】との初めての抗争。
このとき【黎明】は負けた。
原因は私だ。
私が弱かったせいで【黎明】は負けた。
豹牙たちは違うと言ってくれたけど、私はそうとしか思えなかった。
何故なら他の幹部たちには全員【堕天】の幹部がマークについていたというのに私には下っ端の構成員しかあてがわれず、その分のしわ寄せが豹牙さんにいったせいで【堕天】の総長と幹部二人を同時に相手することになってしまったから。
その結果豹牙さんは気配を消していた相手の構成員に後ろからパイプで殴られ重傷を負った。
後の流れはさっき見た悪夢と同じだ。
ヤツが顔に向かって手を伸ばしてきたというのに、私は微動だにできなかった。
そしてそれを止めたのは気絶していたはずの豹牙さんだった。
ヤツの腕をグッと掴み、「俺らの負けだ。今日は引いてやる」と告げられたのだ。