冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「後継者を辞退することは……」
「おじい様がお許しにならないかと」
ここを抜け出したところで、行く当てもない。
かといって、やっぱり後継者の重圧とかすごいし。
「わ、わたしにお嬢様なんて務まるわけない……っ!」
「柚禾お嬢様、落ち着いてください」
「いきなり後継者だとか言われても、実感ないし簡単に受け止められるわけ――」
急に腕を優しく引かれて、すっぽり抱きしめられた。
えっ……なんでこんなことに?
「羽澄グループの会長が決めたことは覆らない。ゆずがひとりでどうにかできることじゃない」
「それはわかってる……けど」
「いいから俺に任せて。そしたら大丈夫だから」
抱きしめる力を少しゆるめて、わたしの瞳をしっかり見ながら。