冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情


唇に触れる熱が、あっという間に広がっていく。


どんどん深くなって、何も考えられなくなる。


でも、少しずつ息が苦しくなって、埜夜くんの服をキュッとつかむと。


「唇ずらすのダメ」

「ぅ……ん、もう……」


わたしと埜夜くんは恋人同士でもないのに、こんなキスしてもいいのかな。


* * *


お屋敷に帰ってきて食事の時間。

わたしのそばでグラスに飲み物を注ぎながら、埜夜くんが言った。


「そういえば、羽澄家の親戚一同が集まる日が決まったから」

「え? それってわたしも関係――」


「あるに決まってる。そこで正式に柚禾が後継者だってことが発表されると思う」


親戚一同が集まるときは、別邸の大きな和室を使うらしい。


「集まって発表したら解散?」

「いや、食事会があるはずだから。食事は懐石料理だと思う」


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