冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「作法とか何もわからないのにどうしよう」
そもそも懐石料理とか普段食べないし。
でも、親戚一同が集まるってことは、失敗は許されないわけで。
おじいちゃんも厳しく見てるだろうし。
「んじゃ、今から慣れておく?」
――というわけで、埜夜くんがいろいろ教えてくれることになったんだけど。
「なんかこれおかしい気がする……!」
「どこが? ゆずはただ食事するだけでいいんだよ」
「な、ならなんで埜夜くんが後ろから抱きついてくるの……!」
「こうしたほうが教えやすいし」
和室に移動して、作法とか教えてもらえると思ったのに。
埜夜くんが近いせいで、全然集中できない。
「ほら、ちゃんと集中して」
「……っ、耳元はダメ……」
お箸を持ってる指先に、うまく力が入らなくなる。