冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
思わず埜夜くんの服をつかむと、その手をギュッと握り返してくれた。
「痛かった?」
「甘くて、おかしくなる……」
キリッと睨んでも効果なし。
むしろ、フッと笑ってわたしのまぶたに軽くキスを落としてくるの。
「……おかしくなればいいよ。俺の前だけで」
ふたりっきりの時間は、危険でとっても甘い。
* * *
そんな毎日を過ごしていたある日。
いつも通り授業が終わって、車でお屋敷に帰って来たときだった。
わたしが車から降りると、五十代くらいのスーツ姿の男の人が五人くらい、お屋敷から出てきた。お客さん……かな。
すれ違う瞬間に軽く会釈をすると、その中のひとりが「あれ……キミはたしか柚禾ちゃんか?」とボソッと言った。
その声に反応して、思わず足を止めて振り返った。