冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
「柚哉くんは後継者としての立場を捨てたと思っていたよ。まさか、今頃になって娘のキミが後を継ぐことになるなんてな。キミが羽澄の後継者としての重圧に耐えられるのかね」
今のわたしじゃ、返す言葉が何もない。
この人たちの言う通りなのかもしれない。
わたしが後継者だってことを納得しない人は、きっともっといる。
「知識もほとんどない一般家庭で育ってきたキミが、この世界でやっていけるだろうかね。後継者にはもっとふさわしい子がいるだろうに」
否定的な意見や反対の意見、きっとこれから先もっとひどいことを言われるかもしれない。
それをぜんぶ受け止めていく覚悟も必要になってくる。
でもたぶん……今のわたしには、その覚悟がまだなくて。厳しい言葉に、耳を塞ぎたくなる。