冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
たぶん、親戚の人たちはわたしが羽澄家の人間で、しかも後継者だってことを知らない。
わたしの両親が、羽澄家の親戚と関わってこなかったから。
「おじい様、お久しぶりです」
「史奈か。久しぶりだな」
いま挨拶に来た子は、わたしと同い年くらいの女の子。
この子も同じように、わたしの存在を気にしてる。
「おじい様……そちらの方は?」
「あぁ、あとで正式に発表する予定だ」
「発表……? それはもしかして――」
「史奈。今は自分の席につきなさい」
「……わかりました」
史奈さん……だっけ。
今日の集まりに来てるってことは、羽澄家と何かしら関わりがある子だよね。
一瞬笑みを見せたかと思えば、睨むようにわたしのほうを見ていた。
今の態度からして、わたしのことをあまりよく思ってないだろうな……。