冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情
* * *
あのあと、史奈さんは何も言わずに席を外した。
そして今、わたしは埜夜くんとおじいちゃんの部屋に呼ばれた。
あんな目立つことしたから叱られるかもしれない。
「柚禾」
「は、はい」
ずっと黙っていたおじいちゃんが、ゆっくり口を開いた。
何を言われるんだろう。
不安になって、思わず拳をギュッと握ると……。
「お前は強くなったな」
「……え?」
まさかの言葉に、目をぱちくりさせておじいちゃんを見る。
「今日、お前の姿を見て正直驚いた。これほどまでに成長していたことにな」
おじいちゃんのこんなやわらかい表情、はじめて見た……かも。
「これからもその調子で頑張るといい。お前が将来どのような姿に成長するか、わたしも楽しみにしているからな」
正直、おじいちゃんからは認められてないと思っていた。
ただわたしは血のつながりがあるから後継者になれただけで、期待もされてないと思っていた。
それに、冷たいと思ってたおじいちゃんの優しさが、ほんの少し見えた気がする。